Class[会計とバリュエーションの基礎]

今日の会計とバリュエーションの基礎は、M社の財務分析。特にSN,CN,SSの3社を利用した財務的特長やそこからの改革案(CFOとしての)などをプレゼンするという内容でした。その中で、何点か気になった内容が。

(1)SN社の事業ポートフォリオの話。
SN社が昨今あまりよいパフォーマンスを示していないことの背景に、その企業がEVAを用いて企業評価を行っているということだそうです。EVAは、
EVA=NOPAT - 投下資本×WACC
⇔ EVA=投下資本×(ROICーWACC)
という式に展開されます。すなわちEVAは経営に注入したこと資本による事業利益率がその資本が抱える機会コスト(株主+債権者)を上回るような企業経営を目指すということです。
ただよく分からないのは「SN社に大型案件がない」ということとEVAの問題とがどう関係するのか?
資本コストを十分に上回る程度にROICを上昇させることで企業価値を最大化させることが目標であり、仮に大型の事業案件がないために投下資本営業利益率が十分に上昇していないならば、大きな投資機会のあるところへ投資をすべきなのか、「大型案件」の存在はEVA上でも評価されるでしょうし、当然株主の期待利益率が上昇すれば資本コストも高まる。この「大型案件がないことでの企業価値の低下」と「EVAの評価を使っていることの意義」とのlinkageが見えません。というか分かりません。
そもそもSN社が大型案件を仮に持っていたとしても、この企業自体、外部資金調達コストはそれほど高いわけではないので、社債でも何でも借り入れて大型案件に投資するような気がします。もし社債を多く発行すれば、資本コスト(WACC)もそれなりに上昇するでしょうし、そうなれば1〜2年内のEVAは一時的に低下するようにも思えます。(レバレッジは上昇するのでROEは上昇するかもしれませんが・・・)

(2)M社の多角化
多角化については、様々な議論が出ました。
 株主の視点からは「株主は自ら株式ポートフォリオ保有すれば経営者は多角化をする必要がない。」コーポレートファイナンスにおける多角化の批判論文の中心的役割を持った内容です。ですが、ここでいう「株主」とは誰なのでしょうか?ファンドなどを想定して考えれば考えられなくもありません。ただ、「安定株主」はそういっていられるでしょうか?もう少し議論の余地が必要かもしれません。
 「経営者には株主と事業部門長との間に情報の非対称性があることから2つのエージェンシー問題を抱える。」多角化ディスカウントの議論で中心的役割を持つ内容です。経営者は外部から資金調達を行うよりもコストがない内部キャッシュを利用する。そのため外部からは観測されない情報の非対称性が起こりやすく、結果的に資本配分が非効率になってしまう。このことは、M社に当てはまるのでしょうか。そもそもM社は現在キャッシュを利用していない。つまり内部資本市場は最初から機能していない。仮に外部からの資金調達を行った場合、社債条項により明確化する必要があるので、現状で内部資本市場が活用されていないのでは?つまりは、M社では多角化ディスカウントが起きている可能性を示唆されるが、その原因については経営の非効率(な資源配分)によるものかどうかは分からないのかと思いました。確かに財務リスクを十分にとっていない、所謂safe projectへの投資が中心であり、どちらかというと債権者を意識した資本構成なのかもしれません。Payer and Shivdasani(2000?)の議論するところの投資機会を重視した資源配分よりも負債の利払いを意識したキャッシュフローにセンシティブな資源配分が行われている可能性もあります。(授業でも経営者と債権者は同等としていましたし・・・)M社の企業価値の毀損(というか超過価値の減少)は財務的リスクを取りに行っていないことのほうが、原因の配分としては高いという感じなのかもしれませんね。

皆さんはどのように思われますか?